パンデミック中のグリーンカード取得体験記
アメリカに引っ越すこと2年、ようやくグリーンカードを取得しました。COVID-19のパンデミック下、予測がつかないことばかりでしたが、かなりスムーズに取ることができました。
お断り: この記事は個人の体験記であり、内容の正確性は保証しません。個別の内容については移民弁護士などにご相談ください。
グリーンカードの種類
グリーンカードは、家族によるものと雇用関係によるものが代表的ですが、私は雇用関係によるものを取得しました。雇用関係によるものには次の種類があります。
- EB-1: 卓越した専門家(科学、芸術スポーツなど)、研究者、国際企業管理職
- EB-2: (通常修士以上の)高学歴者、または優れた能力を持つ者など
- EB-3: EB-2 に該当しない専門労働者、その他労働者など
その他 EB-4, EB-5 というカテゴリがありますが一般的な会社員の技術職は該当せず、上記3種類から選ぶことになります。私は国際企業管理職として EB-1、または修士卒の専門職として EB-2 での申込みが可能でした。
この中で EB-1 はPERM(労働認定) が不要で、EB-2, 3 は PERM が必要という違いがあり、この PERM は数ヶ月かかりますので、条件によっては EB-1 のほうが早く取れる場合があります。ただし基準は EB-1 のほうが厳しく、用意する書類も多いので、EB-1 と EB-2 両方に該当する場合でも EB-2 のほうが良い場合があると聞きます。特に私が申請したときは I-140 の premium processing が EB-1 だけできなかった(現在はできる)ので、トータルの時間が長くかかりました。詳しくは移民弁護士にご相談ください。
グリーンカードは種別ごとに発行数が決められており、それ以上に申し込みが殺到すると待ちが発生します。種類別・国別の取得待ち行列は Visa bulletin で見ることができます。
1st, 2nd, 3rd... とありますがそのまま EB-1, 2, 3 に対応します。国ごとに列が分かれていますが、よく「インドや中国出身だとグリーンカードを取るのが大変」というのはこれに由来します。インド中国を除く地域では、現在待ち行列がありません(C = Current となっています)。でも、インド出身であれば EB-1 だと2020年1月1日以前の priority date、EB-2 だと2009年10月12日以前である必要があり、10年以上の待ちが発生しています。
現在は日本出身であれば current なので、取得のチャンスであると言えます。現在この国別制限を外す動きがあり、成立すると一時的に取得に時間がかかる可能性があります。
書類の番号と内容
ビザの申請には I- から始まる書類番号がいっぱい登場します。整理します。
- I-131: Travel document, advance parole(AP) 申請
- I-140: Immigrant petition for alien workers, 外国人労働者の移民請願
- I-485: Adjustment of status (AOS), グリーンカード本体の申請
- I-765: Employment Authorization Document (EAD), 労働許可書申請
タイムライン
- 2018年12月: アメリカに L-1A ビザで入国
- 2019年1月: 社内でグリーンカード申請手続き開始(EB-1)、書類準備開始
- 2019年9月: 移民弁護士が EB-1 の申請書類の作成開始。何度もやり取りをして推薦書類などを詰めていきます
- 2020年1月: 移民弁護士が突然「EB-2の priority date も current で、そっちのほうが早いけど変えませんか?」と言ってくる。確かに早そうなので EB-2 に切り替え
- 2020年3月6日: PERM申請、priority date がこの日に確定
- 2020年6月30日: PERM承認
- 2020年8月5日: I-140 を premium processing で申請
- 2020年8月6日: 健康診断を受ける(Redmondの病院に行きました)
- 2020年9月6日: I-140 が承認
- 2020年9月15日: I-485 (AoS), I-131 (AP), I-765 (EAD) を申請
- 2020年12月12日: 指紋採集(biometrics appointment)
- 2020年12月29日: EAD/AP コンボカードが発注
- 2020年12月31日: I-765 が承認(実質的に I-131も承認)
- 2021年1月7日: EAD/AP コンボカードを受理
- 2021年1月22日: なぜかカードが来たあとでWeb上で I-131 が承認
- 2021年1月27日: グリーンカードが発注
- 2021年1月28日: I-485 が承認
- 2021年2月3日: グリーンカードを受理
承認よりカードの発注が先になっていますが、間違いではないです。
タイムラインを見るとすごく時間がかかっていますが、大部分は EB-1 の書類準備に時間をかけてしまったこと、その後 EB-2 に変更したので最初からやり直しになったことが大きな原因です。実質的に EB-2 の申請にかかったのは準備も含めて2020年1月からなので、ちょうど1年ぐらいでした。かなり早いほうだと思います。
EB-1 の準備も、私がサボっていただけなので、がんばれば3ヶ月ぐらいで申請までいけたと思います。2020年は次々と移民制限の大統領令が発行されたので、もっと早く取っておけば... とかなりドキドキしました。そもそも最初から EB-2 でと言ってくれれば良かったのにと思いました。
12月に指紋採集が終わったあとは超特急で、 そこから約1ヶ月半でグリーンカードが発行されました。コロナウイルスの影響で、面接はありませんでした。
健康診断は弁護士によって I-485 と同時に出す場合と、後から出す場合があるようですが、私は同時に出しました。AOSの書類ができ始めた頃に移民弁護士から「受けてください」と言われ、自分で病院を探しました。パンデミックなので心配でしたが、Redmond の Advanced Family Medicine というところが普通に電話したら近日の日程ですぐに予約取れました(他のところは問い合わせてないけど、たぶん大丈夫だと思います)。結核の検査はツベルクリン反応ではなくて血液検査だったので、日本で受けたBCGの影響もなかったです。
それから、いわゆる "public charge" のフォームも作成して I-485 と一緒に提出しました。こちらは1年分の銀行や証券口座の明細、給与明細、最新のクレジットレポートなど大量の書類が必要でした。
指紋採集の様子
I-485を提出してしばらく経つと、普通郵便でUSCISから指紋採集の案内が届き、その通知に従ってフィールドオフィスに行きます。通知書には自分で記入する欄があるので、忘れずに記入しておきます。シアトルのフィールドオフィスは Tukwila にあります。駐車場がありますが有料で、なんと一回 $8 かかります。
時間の15分前に来いと書いてありますが、そんなに厳密には管理されていない様子でした。他の人との距離を保って待ちますので、少し時間がかかります。
名前を呼ばれたら書類を係に提出し、あとは番号札で順番が管理されます。いきなり写真撮影から始まります。心の準備ができていなかったのでかなり写りが悪くなりました。10年使いますので気合を入れていきましょう。申請時に添付した写真はEADにもグリーンカードにも載りません。なんであんなに枚数を送らなければいけないのか不明です。
指紋は全指取られます。そして人差し指だけインクを付けてもう一度取られ、それがグリーンカードに転写されます。といっても言われるがままに指を差し出すだけで、機械と自分の間にはアクリル板がありますので、細かいところは係の人におまかせです。
待ち時間15分ぐらい、採集10分ぐらいで全部で30分かからなかったと思います。
USCIS のWebシステム
USCIS の Web はどこに何があるかわからないので、毎回ググったほうが早いです。申請中に使う機能はいくつかありますが、中でもおすすめは myUSCIS です。
ここにアカウントを作ってケース番号を登録しておくと、変更があったときにメールが通知が来ますし、普通のトラッキングでは見れない過去の変更履歴も見ることができます。ぜひ登録しておきましょう。
その他、平均的な待ち時間を見ることができるサービスもあります。
待ち時間は範囲が示されますが、最初の数字は半数が処理される時間(中央値)、二番目の数字は 93% が処理される時間です。これはシアトルの I-485 処理時間で、12ヶ月から31.5ヶ月(!)となっていますが、私は4ヶ月半で承認が降りました。今はコロナウイルスの影響でばらつきが非常に大きいみたいです。
申請中に海外に出るには
グリーンカードを申請すると、一部のビザを除いて保有中のビザが無効になり、再入国できません。回避するためには Advance Parole (I-131) の申請が必要です。
ただし、dual intent なビザを持っている人はビザが無効にならず、そのまま帰ってくることができます。H-1B, L-1 などは dual intent が認められ、グリーンカード(正確には I-485, adjustment of status)を申請してもビザが無効になりません(O-1 は dual intent では無いので、ここに関しては H-1B, L-1 のほうが優れています)。それでも予備として AP を申請することが一般的なようです。この場合、海外に出る時期によって異なる事象が発生します。
- I-485/I-131 申請の瞬間: アメリカ国内にいないと申請却下されます
- I-485/I-131 受理後 AP 承認前: ビザを使って再入国可、AP申請が無効に
- AP 承認後: ビザまたはAPを使って再入国可
ですので、H-1B, L-1 であればグリーンカード申請中に AP 無しで出国しても、ビザが無効にならずに再入国できるわけです。入国時には AP または ビザを選べますが、通常はビザを選ぶことになります。AP はビザではなく、AOSの申請に紐付いていますので、もしAOSの申請が却下されるとその瞬間に不法滞在となります。さらにAPで入国した瞬間に H-1B, L-1 ビザが無効になりますので、これらのビザについてくる特典が無くなります。空港での入国審査も AP は必ず別室送り(secondary inspection)になりますので、dual intent なビザをお持ちの方は AP は保険で、まず使わないものです。
dual intent ではない方は、AP がないと再入国できません。グリーンカードが手に入るまでなるべく国外に出ないように弁護士に言われると思います。
私はコロナウイルスの影響で一度も海外に出ませんでした。
グリーンカードの受け取り
グリーンカードは Priority Mail (レターパックのようなもの)で送られてきます。USCIS からは追跡番号が来るんですが、追跡番号よりも郵便が届くほうが早かったです。