シアトルぐらしのソフトウェアエンジニア

シアトルで暮らすソフトウェアエンジニアが、海外生活についてお届けします。

コロナウイルスのワクチン接種の記録

現在アメリカでは16歳以上の大人は誰でもコロナウイルスのワクチンを受けれるようになっています。シアトル周辺では予約無しで当日行けるところも多く、私も4月に2回受けてきたので今後ワシントン州、また日本でワクチンを受ける人の参考になればと思い、記録を残します。

Yakima での一回目接種

ワシントン州では16歳以上の健康な大人がワクチン接種できるのは4月15日からでしたが、一部の予防接種会場ではすでに供給が需要を上回っていて、来た人なら誰にでも接種をしているという情報が流れていました。調べたところ、Yakima というシアトルから車で2時間半ぐらいの場所でにある連邦政府直轄の集団接種会場が、ワシントン州内に住んでいる人なら誰でも歓迎ということ知ったので、予約を取って行くことにしました。

予約は州が運営しているサイトで取ることができます。住所、氏名、生年月日などの必要事項の他に、健康の質問(今までワクチンでアレルギー反応が出たか)などに答えると、予約が完了し、確認メールが届きます。なお、この連邦政府の集団接種会場は当日予約無しでも来た人は全員受けられるほど余裕があったそうです。

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Yakima への道のり


近くに着くと "FREE COVID VACCINE" "TURN RIGHT" という臨時の電光掲示板が立っていて、とにかく無料だから通りがかった人は誰でも歓迎、という雰囲気でした。

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FREE COVID VACCINE の電光掲示

ドライブスルー会場なので、車に乗ったまま入っていきます(徒歩会場も隣にあります)。入り口で受付メールを見せて、運転免許証を提示するだけでOKでした。なおワシントン州に住んでいることを示せれば(例えば公共料金の領収証やホームレスシェルターの一筆)があればOKだと明記されていて、身分証明証は必須では無いです。会場によっては完全に手ぶらでも受けられるはずです。

会場入り口にいたボランティアスタッフが BTS の Dynamite をラジカセで流して踊りながら、ノリノリで案内しているのが印象に残っています。中に入るとしばらく道なりに進んだあと、テントが並んでいる接種エリアに案内されます。

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テントが並んでいる接種エリア

これらのテントはスタッフ用のもので、接種自体は青空のもとで行われました。軍服を着ている人が近づいてきて、そのまま車内に座ったまま注射針を刺されます。あとから聞いたところによると、陸軍、州軍、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)など、非常時に動くリソースが総動員されていたようです。注射自体は一瞬で特に痛くはなかったです。

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予防接種の瞬間

注射の後はアナフィラキシーなどの直後に現れる可能性のある副作用に対応するため、15分間待機しました。その後はそのまま運転して会場を後にして終了です。入場から退場まで40分ぐらいで終わり、非常にスムーズでした。車からは一歩も外に出ませんでした。

会場には救急車が待機していて、もし大きな副作用があったときにいつでも病院に搬送したり応急処置が取れるような準備が整っていました。なおこの会場は連邦政府による試験運用的な意味合いもあったらしく、数日後に Second Gentleman (ハリス副大統領の夫)が視察に来るような場所でした。

Arlington での二回目接種

注射したのは Pfizer/BioNTech のワクチンでしたので、3週間後に2回目が必要でした。Yakima まで戻ることも可能でしたが、やはり長旅になるのでなるべく近場ということで調べると、近郊の Arlington 空港 で Snohomish 郡が集団接種会場を運営していて、4月後半になると前日でも数百から1000を超える予約枠が余っている状態になっていたので、そこに行くことにしました。ここは車で40分ぐらいなので、 Yakima と比べると近くです。

空港に着いたら正面の入り口ではなくて裏口のようなところから、未舗装路を進んで行きました。途中で受付メール、身分証明書、一回目の接種カードを見せてさらに進んでいきます。そうすると空港の滑走路に直接出ました。

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Arlington 空港接種会場

ここでは空港の滑走路を一部閉鎖して(?)、そのまま予防接種会場にしていました。滑走路を自家用車で走ったのは初めてです。営業時間ギリギリに行ったので少し待ちましたが、それでも20分も待ちませんでした。

接種はその奥にあるテントで行われます。この会場もドライブスルーです。

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予防接種が行われるテント

接種の写真自体は撮りませんでしたが、テントの空いている入り口に車を止めて、そのまま腕を窓枠に載せて注射してもらいました。後は一回目と同じく15分待機してそのまま走り出ます。一回目と同じくほぼ痛みはありませんでした。

5月上旬の予約空き状況

5月上旬の現在では、予約を取るのは非常に簡単になっています。近所の CVS などの薬局でも受けられますし、今サイトを確認したところ、シアトル市が運営している集団接種会場では2万程度の空き予約枠が確認できました。

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シアトル市の予約枠

このシアトル市の直営会場は Lumen Field というスタジアムの屋内会場を使っていて、車では無く歩いて受けるところです。ここは毎日最大2万2000人の予防接種を行うキャパシティがあるそうです。

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Lumen Field 接種会場の様子

また、当日予約無しで飛び込めるところも多くなっていて、少し探せばいつでも打てる状態です。その他にも献血バスのような形で教会や農場に出張接種をしたり、外出できない人向けに在宅接種をしたりもしているようです。日本と違って接種券が送られてきたりはしないので、自分から情報を集めないとここまで空いているという状態が伝わりづらいかな、とは思います。

現在アメリカ全体ではすぐにワクチンを受けたい人には一通り行き渡って、ワクチン余りが問題になり始めています。一日の接種数も少し減り始めています。まだ受けていない人にいかに受けてもらうか、と、アメリカ国外でコロナウイルスが流行している地域にワクチンを届けることが重要になってきていると思います。

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NY Times 紙による接種状況の集計。一時一日300万回を超えたのが、230万回程度まで下がってきた。

自分が体験した副作用

副作用が気になる方もいると思います。公式には CDC のサイトなどを確認するべきですが、Pfizer/BioNTechを接種した私個人の経験としては

  • 一回目は腕が少し痛むだけ。インフルエンザの予防接種のような感じ。
  • 二回目は翌日に37.6度ぐらいの熱が出た。喉がかなり乾く感じ。だるさはあるものの動けないほどではなかった。会社は(在宅だが)病欠を取った。

という感じでした。個人差が非常に大きく、ほとんど何もなかった人、38度ほどの熱を出した人などいろいろわかれるようでした。それでも COVID-19 を発症するよりは何万倍もマシだと思います。

使用が開始されてから半年以上経っていること、すでに何億回と打たれているワクチンで、治験も 43,000 人で第三相試験が行われて、仮によほど珍しい副作用があったとしてもすでに確認されているだろうことなどを考慮すると、非常に安全なワクチンだと思います。

最後に

ワクチンは新型コロナウイルスへの切り札だと思いますし、実際、自分が接種してからしばらくすると、家の外に出る気持ちが楽になりました。2回目の接種から2週間経つと免疫が確立したとされる(fully vaccinated)ので、そうなれば1年以上ぶりに屋内で外食ができそうです(感染者数が多かったので、去年の3月以降一度もレストラン内で飲食していません)。

アメリカはコロナウイルスの初期対応が悪く、大規模な感染が拡大し大変多くの死者が出ました。しかし今のワクチンの配布・接種のロジスティックスは非常に頑張っていると思います。とにかく広いスペースがあって交通の便利なところは何でも使うという感じになっていますし、スタッフもボランティア、軍、地元の医療従事者など総動員です。この非常事態への対応姿勢はすごいなと思いました。

実際 Yakima の会場に着いたときは「これでようやく日常に戻っていける」と思って、少し涙ぐみました。日本でも連休明けから自治体への配布が本格化するという報道もありますし、この体験記が参考になれば幸いです。