シアトルぐらしのソフトウェアエンジニア

シアトルで暮らすソフトウェアエンジニアが、海外生活についてお届けします。

コロナウイルスのワクチン接種の記録

現在アメリカでは16歳以上の大人は誰でもコロナウイルスのワクチンを受けれるようになっています。シアトル周辺では予約無しで当日行けるところも多く、私も4月に2回受けてきたので今後ワシントン州、また日本でワクチンを受ける人の参考になればと思い、記録を残します。

Yakima での一回目接種

ワシントン州では16歳以上の健康な大人がワクチン接種できるのは4月15日からでしたが、一部の予防接種会場ではすでに供給が需要を上回っていて、来た人なら誰にでも接種をしているという情報が流れていました。調べたところ、Yakima というシアトルから車で2時間半ぐらいの場所でにある連邦政府直轄の集団接種会場が、ワシントン州内に住んでいる人なら誰でも歓迎ということ知ったので、予約を取って行くことにしました。

予約は州が運営しているサイトで取ることができます。住所、氏名、生年月日などの必要事項の他に、健康の質問(今までワクチンでアレルギー反応が出たか)などに答えると、予約が完了し、確認メールが届きます。なお、この連邦政府の集団接種会場は当日予約無しでも来た人は全員受けられるほど余裕があったそうです。

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Yakima への道のり


近くに着くと "FREE COVID VACCINE" "TURN RIGHT" という臨時の電光掲示板が立っていて、とにかく無料だから通りがかった人は誰でも歓迎、という雰囲気でした。

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FREE COVID VACCINE の電光掲示

ドライブスルー会場なので、車に乗ったまま入っていきます(徒歩会場も隣にあります)。入り口で受付メールを見せて、運転免許証を提示するだけでOKでした。なおワシントン州に住んでいることを示せれば(例えば公共料金の領収証やホームレスシェルターの一筆)があればOKだと明記されていて、身分証明証は必須では無いです。会場によっては完全に手ぶらでも受けられるはずです。

会場入り口にいたボランティアスタッフが BTS の Dynamite をラジカセで流して踊りながら、ノリノリで案内しているのが印象に残っています。中に入るとしばらく道なりに進んだあと、テントが並んでいる接種エリアに案内されます。

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テントが並んでいる接種エリア

これらのテントはスタッフ用のもので、接種自体は青空のもとで行われました。軍服を着ている人が近づいてきて、そのまま車内に座ったまま注射針を刺されます。あとから聞いたところによると、陸軍、州軍、FEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)など、非常時に動くリソースが総動員されていたようです。注射自体は一瞬で特に痛くはなかったです。

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予防接種の瞬間

注射の後はアナフィラキシーなどの直後に現れる可能性のある副作用に対応するため、15分間待機しました。その後はそのまま運転して会場を後にして終了です。入場から退場まで40分ぐらいで終わり、非常にスムーズでした。車からは一歩も外に出ませんでした。

会場には救急車が待機していて、もし大きな副作用があったときにいつでも病院に搬送したり応急処置が取れるような準備が整っていました。なおこの会場は連邦政府による試験運用的な意味合いもあったらしく、数日後に Second Gentleman (ハリス副大統領の夫)が視察に来るような場所でした。

Arlington での二回目接種

注射したのは Pfizer/BioNTech のワクチンでしたので、3週間後に2回目が必要でした。Yakima まで戻ることも可能でしたが、やはり長旅になるのでなるべく近場ということで調べると、近郊の Arlington 空港 で Snohomish 郡が集団接種会場を運営していて、4月後半になると前日でも数百から1000を超える予約枠が余っている状態になっていたので、そこに行くことにしました。ここは車で40分ぐらいなので、 Yakima と比べると近くです。

空港に着いたら正面の入り口ではなくて裏口のようなところから、未舗装路を進んで行きました。途中で受付メール、身分証明書、一回目の接種カードを見せてさらに進んでいきます。そうすると空港の滑走路に直接出ました。

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Arlington 空港接種会場

ここでは空港の滑走路を一部閉鎖して(?)、そのまま予防接種会場にしていました。滑走路を自家用車で走ったのは初めてです。営業時間ギリギリに行ったので少し待ちましたが、それでも20分も待ちませんでした。

接種はその奥にあるテントで行われます。この会場もドライブスルーです。

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予防接種が行われるテント

接種の写真自体は撮りませんでしたが、テントの空いている入り口に車を止めて、そのまま腕を窓枠に載せて注射してもらいました。後は一回目と同じく15分待機してそのまま走り出ます。一回目と同じくほぼ痛みはありませんでした。

5月上旬の予約空き状況

5月上旬の現在では、予約を取るのは非常に簡単になっています。近所の CVS などの薬局でも受けられますし、今サイトを確認したところ、シアトル市が運営している集団接種会場では2万程度の空き予約枠が確認できました。

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シアトル市の予約枠

このシアトル市の直営会場は Lumen Field というスタジアムの屋内会場を使っていて、車では無く歩いて受けるところです。ここは毎日最大2万2000人の予防接種を行うキャパシティがあるそうです。

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Lumen Field 接種会場の様子

また、当日予約無しで飛び込めるところも多くなっていて、少し探せばいつでも打てる状態です。その他にも献血バスのような形で教会や農場に出張接種をしたり、外出できない人向けに在宅接種をしたりもしているようです。日本と違って接種券が送られてきたりはしないので、自分から情報を集めないとここまで空いているという状態が伝わりづらいかな、とは思います。

現在アメリカ全体ではすぐにワクチンを受けたい人には一通り行き渡って、ワクチン余りが問題になり始めています。一日の接種数も少し減り始めています。まだ受けていない人にいかに受けてもらうか、と、アメリカ国外でコロナウイルスが流行している地域にワクチンを届けることが重要になってきていると思います。

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NY Times 紙による接種状況の集計。一時一日300万回を超えたのが、230万回程度まで下がってきた。

自分が体験した副作用

副作用が気になる方もいると思います。公式には CDC のサイトなどを確認するべきですが、Pfizer/BioNTechを接種した私個人の経験としては

  • 一回目は腕が少し痛むだけ。インフルエンザの予防接種のような感じ。
  • 二回目は翌日に37.6度ぐらいの熱が出た。喉がかなり乾く感じ。だるさはあるものの動けないほどではなかった。会社は(在宅だが)病欠を取った。

という感じでした。個人差が非常に大きく、ほとんど何もなかった人、38度ほどの熱を出した人などいろいろわかれるようでした。それでも COVID-19 を発症するよりは何万倍もマシだと思います。

使用が開始されてから半年以上経っていること、すでに何億回と打たれているワクチンで、治験も 43,000 人で第三相試験が行われて、仮によほど珍しい副作用があったとしてもすでに確認されているだろうことなどを考慮すると、非常に安全なワクチンだと思います。

最後に

ワクチンは新型コロナウイルスへの切り札だと思いますし、実際、自分が接種してからしばらくすると、家の外に出る気持ちが楽になりました。2回目の接種から2週間経つと免疫が確立したとされる(fully vaccinated)ので、そうなれば1年以上ぶりに屋内で外食ができそうです(感染者数が多かったので、去年の3月以降一度もレストラン内で飲食していません)。

アメリカはコロナウイルスの初期対応が悪く、大規模な感染が拡大し大変多くの死者が出ました。しかし今のワクチンの配布・接種のロジスティックスは非常に頑張っていると思います。とにかく広いスペースがあって交通の便利なところは何でも使うという感じになっていますし、スタッフもボランティア、軍、地元の医療従事者など総動員です。この非常事態への対応姿勢はすごいなと思いました。

実際 Yakima の会場に着いたときは「これでようやく日常に戻っていける」と思って、少し涙ぐみました。日本でも連休明けから自治体への配布が本格化するという報道もありますし、この体験記が参考になれば幸いです。

パンデミック中のグリーンカード取得体験記

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アメリカに引っ越すこと2年、ようやくグリーンカードを取得しました。COVID-19のパンデミック下、予測がつかないことばかりでしたが、かなりスムーズに取ることができました。

お断り: この記事は個人の体験記であり、内容の正確性は保証しません。個別の内容については移民弁護士などにご相談ください。

グリーンカードの種類

グリーンカードは、家族によるものと雇用関係によるものが代表的ですが、私は雇用関係によるものを取得しました。雇用関係によるものには次の種類があります。

  • EB-1: 卓越した専門家(科学、芸術スポーツなど)、研究者、国際企業管理職
  • EB-2: (通常修士以上の)高学歴者、または優れた能力を持つ者など
  • EB-3: EB-2 に該当しない専門労働者、その他労働者など

その他 EB-4, EB-5 というカテゴリがありますが一般的な会社員の技術職は該当せず、上記3種類から選ぶことになります。私は国際企業管理職として EB-1、または修士卒の専門職として EB-2 での申込みが可能でした。

この中で EB-1 はPERM(労働認定) が不要で、EB-2, 3 は PERM が必要という違いがあり、この PERM は数ヶ月かかりますので、条件によっては EB-1 のほうが早く取れる場合があります。ただし基準は EB-1 のほうが厳しく、用意する書類も多いので、EB-1 と EB-2 両方に該当する場合でも EB-2 のほうが良い場合があると聞きます。特に私が申請したときは I-140 の premium processing が EB-1 だけできなかった(現在はできる)ので、トータルの時間が長くかかりました。詳しくは移民弁護士にご相談ください。

グリーンカードは種別ごとに発行数が決められており、それ以上に申し込みが殺到すると待ちが発生します。種類別・国別の取得待ち行列は Visa bulletin で見ることができます。

travel.state.gov

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Visa Bulletin の Final Action Dates

1st, 2nd, 3rd... とありますがそのまま EB-1, 2, 3 に対応します。国ごとに列が分かれていますが、よく「インドや中国出身だとグリーンカードを取るのが大変」というのはこれに由来します。インド中国を除く地域では、現在待ち行列がありません(C = Current となっています)。でも、インド出身であれば EB-1 だと2020年1月1日以前の priority date、EB-2 だと2009年10月12日以前である必要があり、10年以上の待ちが発生しています。

現在は日本出身であれば current なので、取得のチャンスであると言えます。現在この国別制限を外す動きがあり、成立すると一時的に取得に時間がかかる可能性があります。

書類の番号と内容

ビザの申請には I- から始まる書類番号がいっぱい登場します。整理します。

  • I-131: Travel document, advance parole(AP) 申請
  • I-140: Immigrant petition for alien workers, 外国人労働者の移民請願
  • I-485: Adjustment of status (AOS), グリーンカード本体の申請
  • I-765: Employment Authorization Document (EAD), 労働許可書申請

タイムライン

  • 2018年12月: アメリカに L-1A ビザで入国
  • 2019年1月: 社内でグリーンカード申請手続き開始(EB-1)、書類準備開始
  • 2019年9月: 移民弁護士が EB-1 の申請書類の作成開始。何度もやり取りをして推薦書類などを詰めていきます
  • 2020年1月: 移民弁護士が突然「EB-2の priority date も current で、そっちのほうが早いけど変えませんか?」と言ってくる。確かに早そうなので EB-2 に切り替え
  • 2020年3月6日: PERM申請、priority date がこの日に確定
  • 2020年6月30日: PERM承認
  • 2020年8月5日: I-140 を premium processing で申請
  • 2020年8月6日: 健康診断を受ける(Redmondの病院に行きました)
  • 2020年9月6日: I-140 が承認
  • 2020年9月15日: I-485 (AoS), I-131 (AP), I-765 (EAD) を申請
  • 2020年12月12日: 指紋採集(biometrics appointment)
  • 2020年12月29日: EAD/AP コンボカードが発注
  • 2020年12月31日: I-765 が承認(実質的に I-131も承認)
  • 2021年1月7日: EAD/AP コンボカードを受理
  • 2021年1月22日: なぜかカードが来たあとでWeb上で I-131 が承認
  • 2021年1月27日: グリーンカードが発注
  • 2021年1月28日: I-485 が承認
  • 2021年2月3日: グリーンカードを受理

承認よりカードの発注が先になっていますが、間違いではないです。

タイムラインを見るとすごく時間がかかっていますが、大部分は EB-1 の書類準備に時間をかけてしまったこと、その後 EB-2 に変更したので最初からやり直しになったことが大きな原因です。実質的に EB-2 の申請にかかったのは準備も含めて2020年1月からなので、ちょうど1年ぐらいでした。かなり早いほうだと思います。

EB-1 の準備も、私がサボっていただけなので、がんばれば3ヶ月ぐらいで申請までいけたと思います。2020年は次々と移民制限の大統領令が発行されたので、もっと早く取っておけば... とかなりドキドキしました。そもそも最初から EB-2 でと言ってくれれば良かったのにと思いました。 

12月に指紋採集が終わったあとは超特急で、 そこから約1ヶ月半でグリーンカードが発行されました。コロナウイルスの影響で、面接はありませんでした。

健康診断は弁護士によって I-485 と同時に出す場合と、後から出す場合があるようですが、私は同時に出しました。AOSの書類ができ始めた頃に移民弁護士から「受けてください」と言われ、自分で病院を探しましたパンデミックなので心配でしたが、Redmond の Advanced Family Medicine というところが普通に電話したら近日の日程ですぐに予約取れました(他のところは問い合わせてないけど、たぶん大丈夫だと思います)。結核の検査はツベルクリン反応ではなくて血液検査だったので、日本で受けたBCGの影響もなかったです。

それから、いわゆる "public charge" のフォームも作成して I-485 と一緒に提出しました。こちらは1年分の銀行や証券口座の明細、給与明細、最新のクレジットレポートなど大量の書類が必要でした。

指紋採集の様子

I-485を提出してしばらく経つと、普通郵便でUSCISから指紋採集の案内が届き、その通知に従ってフィールドオフィスに行きます。通知書には自分で記入する欄があるので、忘れずに記入しておきます。シアトルのフィールドオフィスは Tukwila にあります。駐車場がありますが有料で、なんと一回 $8 かかります。

時間の15分前に来いと書いてありますが、そんなに厳密には管理されていない様子でした。他の人との距離を保って待ちますので、少し時間がかかります。

名前を呼ばれたら書類を係に提出し、あとは番号札で順番が管理されます。いきなり写真撮影から始まります。心の準備ができていなかったのでかなり写りが悪くなりました。10年使いますので気合を入れていきましょう。申請時に添付した写真はEADにもグリーンカードにも載りません。なんであんなに枚数を送らなければいけないのか不明です。

指紋は全指取られます。そして人差し指だけインクを付けてもう一度取られ、それがグリーンカードに転写されます。といっても言われるがままに指を差し出すだけで、機械と自分の間にはアクリル板がありますので、細かいところは係の人におまかせです。

待ち時間15分ぐらい、採集10分ぐらいで全部で30分かからなかったと思います。

USCIS のWebシステム

USCIS の Web はどこに何があるかわからないので、毎回ググったほうが早いです。申請中に使う機能はいくつかありますが、中でもおすすめは myUSCIS です。

my.uscis.gov

ここにアカウントを作ってケース番号を登録しておくと、変更があったときにメールが通知が来ますし、普通のトラッキングでは見れない過去の変更履歴も見ることができます。ぜひ登録しておきましょう。

その他、平均的な待ち時間を見ることができるサービスもあります。

egov.uscis.gov

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I-485 シアトル待ち時間

待ち時間は範囲が示されますが、最初の数字は半数が処理される時間(中央値)、二番目の数字は 93% が処理される時間です。これはシアトルの I-485 処理時間で、12ヶ月から31.5ヶ月(!)となっていますが、私は4ヶ月半で承認が降りました。今はコロナウイルスの影響でばらつきが非常に大きいみたいです。

申請中に海外に出るには

グリーンカードを申請すると、一部のビザを除いて保有中のビザが無効になり、再入国できません。回避するためには Advance Parole (I-131) の申請が必要です。

ただし、dual intent なビザを持っている人はビザが無効にならず、そのまま帰ってくることができます。H-1B, L-1 などは dual intent が認められ、グリーンカード(正確には I-485, adjustment of status)を申請してもビザが無効になりません(O-1 は dual intent では無いので、ここに関しては H-1B, L-1 のほうが優れています)。それでも予備として AP を申請することが一般的なようです。この場合、海外に出る時期によって異なる事象が発生します。

  • I-485/I-131 申請の瞬間: アメリカ国内にいないと申請却下されます
  • I-485/I-131 受理後 AP 承認前: ビザを使って再入国可、AP申請が無効に
  • AP 承認後: ビザまたはAPを使って再入国可

ですので、H-1B, L-1 であればグリーンカード申請中に AP 無しで出国しても、ビザが無効にならずに再入国できるわけです。入国時には AP または ビザを選べますが、通常はビザを選ぶことになります。AP はビザではなく、AOSの申請に紐付いていますので、もしAOSの申請が却下されるとその瞬間に不法滞在となります。さらにAPで入国した瞬間に H-1B, L-1 ビザが無効になりますので、これらのビザについてくる特典が無くなります。空港での入国審査も AP は必ず別室送り(secondary inspection)になりますので、dual intent なビザをお持ちの方は AP は保険で、まず使わないものです。

dual intent ではない方は、AP がないと再入国できません。グリーンカードが手に入るまでなるべく国外に出ないように弁護士に言われると思います。

私はコロナウイルスの影響で一度も海外に出ませんでした。

グリーンカードの受け取り

グリーンカードは Priority Mail (レターパックのようなもの)で送られてきます。USCIS からは追跡番号が来るんですが、追跡番号よりも郵便が届くほうが早かったです。

もしグリーンカード申請しようとしていたり、現在申請中で、パンデミックの中状況が不透明で不安な方の役に立てば幸いです。

アメリカでの車購入テクニック

突然ですが、車を購入することにしました。シアトルはもともと公共交通機関がそこそこあり、LyftUber などと組み合わせれば車無しでも生活できたのですが、COVID-19 のせいでバス、LyftUber ともに利用しづらくなってしまいました。さらには海外旅行はおろか、州をまたいだ移動もしづらくなってしまい、ワシントン州のアウトドアをフルに楽しむためにも車が必要だと思いました。

この記事では私がどのように車を選び、価格交渉を行ったかという経験をまとめます。

日本での新車購入との違い

はじめに、日本で購入した場合と「ここは違うな」と思った点を列挙しておきます。

  • 7割程度の人はディーラーの在庫から選ぶ
  • その場合は即納。仮ナンバーでその日に乗って帰れる
  • メーカーへのカスタムオーダーを頼むこともできるが、日本で生産される日本車の場合、海を渡るので納期が最低数ヶ月かかる。また、ディーラーも在庫が処分できないため割高。

車種を選ぶ

車に詳しい方であれば大まかにどんな車種が欲しいか、というのがわかっていると思いますが、私はそうではなかったので、どの車種が自分にあっているのかを探す必要がありました。

自分が必要なものを考える

必要な車は家族構成、使いみち、住む地域などによって変わってくると思います。私の場合は

  • 家族2名で1台の車を共有
  • 今の所通勤では使わず、買い物やドライブ、アウトドアがメイン
  • 山に行くしたまに雪が降るので、四駆があると良い
  • 最新の安全装備が揃っているものがほしい
  • 携帯が Android なので Android Auto に対応していればなお良し

という感じで、要件を考えました。新車でも中古でも良かったのですが、最後の2つの項目がネックで、どうしても年式の新しいものになってしまうことから、新車を選ぶことにしました。

全体的な選択肢を見る

まず、Consumer Reports というサイトがメーカーとは独立に、様々な車をテストしてレビューを書いていて、非常に参考になります。信頼性の評価も Consumer Reports のメンバーに送ったアンケートの結果で、壊れやすさを点数にして出してくれています。私は SUV かセダンが欲しかったので、それぞれについて小型から中型のサイズでおすすめされているものを探しました。

 

www.consumerreports.org

なお、 Consumer Reports は有料のサイトですが、シアトル市立図書館の図書カードを持っていれば無料で見ることができます。

www.spl.org

また、Consumer Reports 以外にもレビューサイトがあります。

安全性の評価を調べる

最近の車は過去に比べると比較的安全に作られていますが、それでも第三者の評価機関によるデータを見ることは重要だと思います。アメリカで一番良く参考にされているのは、IIHS (Insurance Institute for Highway Safety) によるものでしょう。

www.iihs.org

このサイトで "Top Safety Pick+" または "Top Safety Pick" と書いてあるものであれば、最新の安全基準を比較的高い水準で満たしていると言えます。

また、欧州で発売されている車種に限りますが、EURO NCAP (European New Car Assessment Programme) のレーティングも参考になります。

www.euroncap.com

ここでも5つ星を取っていれば、欧州でも高い評価をされていることになります。

試乗する

いくつか候補が絞れたら、試乗の予約を取りましょう。現在 COVID-19 に関連して、ディーラー係員が同乗しての試乗を行っておらず、その場合しばしば自動車保険に加入していることを求められるようです。行ってから乗れないと残念なので、電話で確認すると良いでしょう。私は特別に窓を開けた状態で同乗してもらったり、保険が不要なことを確認したり、またディーラーの敷地内で少し動かさせてもらうなどの交渉を行いました。

試乗の予約は電話が一番早いですが、ディーラーの Web サイトの "schedule test drive" のようなフォームやボタンから予約を取ることも可能です。このときに価格の話になるかもしれませんが、「まだ車種を絞っている段階で、すぐには決められない」と言うと特に問題ないと思います。また細かいグレード(英語では trim と言います)の違いが気になる場合には、ディーラーの車庫に在庫があればすべて見せてもらえます。

電話では "Hi, how are you? I'd like to schedule a test drive for the 車種名" のように説明すれば、グレードの確認、個人情報、日時の設定に進めます。

試乗はとても大切だと思います。私は最初レビューサイトを参考に Mazda CX-5 を第一候補に考えていたのですが、試乗した結果候補から外れることになりました。

価格を詰めていく

レビューサイトの情報や試乗での感触を経て車種やグレード、オプションがある程度絞れたら、いよいよ価格を詰めていきます。

相場を知る

いくら評価がよくても値段が合わないと購入できませんから、相場を確認します。新車の実勢価格であれば Kelley Blue Book の Fair Market Range が参考になるでしょう。車種とオプションを入力するとこのようなグラフが表示されます。

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Kelley Blue Book Fair Market Range

この緑の価格帯に入っていれば概ね良い買い物と言えるのではないでしょうか。ここで出てくる2つのキーワード、 Invoice (インボイス価格) と MSRP (メーカー希望小売価格) はどちらも重要で、ディーラーとの価格交渉でも頻出です。

Invoice はディーラーへの納入価格です。MSPR はメーカー希望小売価格で、Webサイトなどで確認できる定価です。通常、よほどの人気車種を除いてMSRPを上回ることはなく、事実上 Invoice あたりでの攻防戦になります。

Invoice を下回ることは実際に良くあり、私の場合もインボイス価格から $1,000 引きぐらいの価格を提示されました。ディーラーは別にリベートやインセンティブで利益を出しているので、こういうことができるようです。

この Invoice 価格の確認方法ですが、この Kelley Blue Book も一つですが、 Costco Auto Program がそれぞれのオプションも含めて MSRP と Invoice を一覧で確認できるので非常に便利です。

実際に自分の地域の販売価格は TrueCar などのサイトで一斉に見積もりが出せます。そして、車種、グレード、オプション、色などを指定して実際にその地域で販売された価格を見ることができます。これでディーラーが出してきたものが実際にどのぐらいのものなのかを見ることができます。

www.truecar.com

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TrueCar の価格表示

もちろんここで提示されている価格帯の下に近づけば近づくほど諦めるものも多くなります。価格と希望はトレードオフです。例えば次のような項目が融通が効けば、選択肢が増えるでしょう。

  • 納期。一番大事です。今すぐ欲しいのか、数ヶ月待てるのかで全然違います。
  • オプション
  • 車種。例えば私が買った時期のシアトルでは、SUVは人気ですがセダンは比較的潤沢に在庫がありました。

見積もりを取る

欲しい車の候補が絞れたらいよいよ見積もりです。完全に一つに絞る必要はなくて、webに書いてある価格と実際に出てくる価格は結構違うので、気になる車種をいくつか聞いてみましょう。その際に、きちんと価格比較できるように次の点に注意しましょう。

  • 車種、グレード、色
  • どのようなオプションが入っているか
  • Destination charge (輸送費) は含まれているのか
  • この見積もりに含まれない諸経費はなにか

特に車の仕様を確認するには、invoice または window sticker を出してもらうのが良いでしょう。メールでコピーを送ってくれるはずです。また、前述の Costo Auto Program で MSRP が一致すれば正しいオプションの組み合わせである可能性が高いでしょう。

 見積もりは TrueCar である程度一括で取得できます。ただすべて網羅してくれるわけではないので、見積もりが出てこなかったディーラーについては web フォームから見積もりをお願いしましょう。その際、少し離れていてもいいので 50km 圏内ぐらいにあるディーラーで見積もりを出してもらっておくと良いでしょう。実際に行くのは大変でも、ネットで見積もりを出してもし安い値段が出てくれば交渉材料に使うことができます。また、現在は COVID-19 のために、家まで納車しに来てもらうというのがお願いしやすい時期でもあります。

ここから価格交渉が始まります。私の経験ではある程度底値に近いものを出してくるディーラーと、そこからまだ$1,000以上の値引き余地があるディーラーに分かれました。4,5件のディーラーから見積もりをもらうころには、ある程度リーズナブルな価格が見えると思います。

見積もりが出てきたら、交渉に備えてスプレッドシートで管理すると良いでしょう。私は次のような簡単なスプレッドシートを作っていました。左端は割愛していますが、ディーラー名が入ります。ちょっとわかりづらいですが、lowest は touring trim の最安基準、premium は limited から安くなる金額が入っています。

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見積もり管理スプレッドシートの例

値引き交渉をする

完全に自分のほしい構成と一致する在庫を持っているところに、「ぜひ買いたいと思っているのですが、もう少し安くなりませんか?」または「XXXドルならばすぐに書いたいと思っているのですが。」と聞いてみましょう。自分から価格を持ちかける場合には、その価格が高すぎないように注意しましょう。提示した価格より下がることはありません。低すぎる価格を提示するのも心象を損ねる可能性がありますが、Kelley Blue Book の Fair Market Range 下限ぐらいであればそんなに失礼にはならないんじゃないかと思います。または、良い対抗見積もりが少し遠くのディーラーで出ていてその値段に納得している場合は「XXXドルという見積もりが他で出ているのですが、そちらのディーラーが最寄りですしぜひそちらから買いたいと思っています。もちろん買ってからのメンテナンスもお願いしたいと考えています。それでお願いできませんか?」というようなお願いの仕方もあります。

もし購入時期がある程度自由が効いたり、不人気車種でも良いというような場合であれば時間をかけて交渉していくことができたかもしれませんが、私の場合は残念ながら「今年の夏を SUV でドライブして楽しみたい」「一番気に入った SUV の車種がいい」という感じで、あまり交渉の余地が無いという感じでした。特にいまシアトル近郊では SUV が飛ぶように売れていて、見積もりをとったのに数日後に電話すると「売れてしまいました」ということが1週間で2回ありました。なので、そこまで値引きせずとも売れてしまう現実があります。

また、重要なのは乗り出し価格(out the door price)です。これを聞くためには住所などの情報が必要なので、候補がもう少し減ったところで乗り出し価格の話もしましょう。

ディーラーによってはメーカーオプションとは別の余分なオプションが付いてきます。例えば盗難防止ステッカー、窓ガラスの保護フィルムなどです。欲しいものであればそのままでもかまいませんが、割高ですし不要なものがほとんどなので、外してもらうように言いましょう。

 ディーラーの営業はその日に商談をまとめるように畳み掛けてきますが、一度帰って比較するのが大事です。必ず複数見てからにしましょう。

現金払いとローン

私はクレジットスコアがあまり良くなかったので現金一括払いでした。担当営業に必要なものを確認したところ、個人小切手で良いと言われたので小切手帳を持参しました。ディーラーによっては casher's check を要求するところがあると思いますので、確認しましょう。

現金一括で買えない場合はディーラーのローン、または地元金融機関のローンを使う手があります。ディーラーのゼロ金利ローンが使えるならばそれもお得ですが、だめな場合は必ず地元の金融機関で金利を確かめて、可能であればpre-approvalを取得してから臨みましょう。

ローンを使う場合でも必ず支払総額を比較しましょう。ディーラーの営業は「月いくらいくら」という話をしたがりますが、それは分割回数を増やして総額を上げるテクニックです。金利も込みの支払総額に集中しましょう。

駐車場

ワシントン州には車庫証明はありませんが、特にシアトル中心部は無料で路上駐車できないので、止める場所の確認をしておきましょう。私は買う前にアパートの管理人に駐車場が空いているかと、初月が日割り計算になるかを確認しておきました。

駐車場の手続きに数日かかるので、それまでは近くの道路に路上駐車することにしました。

実際の購入の流れ

買う車とお店が決まったら、担当営業に連絡してアポイントメントを取ります。取り置きなどはしてくれないので、「希望した車種の、この色の、このオプションで購入したい。アポイントをお願いします」と言ってディーラーに行って手続きすることになります。その日に乗って帰ることになるので、家族と2人でカーシェアを借りて行って、帰りに一人ずつ乗って帰ってくることにしました。

購入して乗って帰るには自動車保険が必要です。事前に見積もりサイトでいくつか価格を出しておきましょう。私はディーラーで購入が確定したときにインターネットでGEICOの保険を申し込みました。他よりかなり安かったです。州によって必要な保険内容が違うので、別途調査が必要です。

私が行ったときにはすでに洗車済みの車がディーラーの玄関に止めてあり、それを最終確認(傷や仕様など)して、手続きに進みました。私の担当営業は特にオプションやパッケージを勧めてくることもなく、3年間75ドルのSubaru Starlinkのパッケージ(リモートで制御ができるネットワーク機能)だけを申し込みました。

実際の購入手続きは担当営業ではなく、ファイナンスの担当者になります。提示された書類を確認しながらサインしていきます。最終的に金額の書いた小切手を渡したら手続き終了です。鍵が渡され、乗って帰ります。

購入したあと

ナンバープレートは仮ナンバーが普通のコピー用紙に印刷されたものがリアガラスに貼られています。実際のナンバーはDOLの手続きが終わるまでだいたい1ヶ月かかり、発行され次第ディーラーに郵送されます。ディーラーから電話がかかってきて、さらにそこから自宅に郵送され、自分たちで本ナンバーをつけることになりました。

シアトル周辺にいる場合は有料道路の料金支払いサービス Good To Go! に登録すると、SR 520の橋、SR 99のトンネルはじめ有料道路が安く通れます。私は2人で乗ることが多いので Flex Pass をお願いしました。

ワシントン州の州立公園に入り放題の Discover Pass はかなりお得ですので、公園に行くなどアウトドアを考えている場合はネットで注文しておくと便利です。最初の2週間はプリンタで印刷できる仮のパスが使え、その後本パスが送られてきます。

もしロードトリップをする場合は、万一に備えロードサービスを検討しましょう。クレジットカードに付帯してくる場合もありますが、牽引できる距離に制限があります。アメリカのJAFに相当する AAA に入っておくと、プランにもよりますが200マイルまで無料で対応してくれます。

アメリカのガソリンスタンドは無料でタイヤの空気圧調整ができないところが多く、空気圧計があると重宝します。最近の車であれば空気圧センサーがついていますが、安いものでも一つあると安心です。ネット通販で10ドル程度からデジタル式のものが購入できます。空気圧はコストコの会員であればコストコで無料で調節してくれる場合が多いようです。

ひどかったディーラーの例

参考までに、「こういう状態でそのまま買ってはいけない」例を出します。隣街の日系自動車メーカーのディーラーに試乗に行きました。対応は問題なかったのですが、試乗後「いくらぐらいか見積もりをお願いします」と聞くと、出てきたのが不要なオプション(ホイールナット、ガラスフイルムなど)、追加保証、など全部込みで相場+80万円ぐらいの価格を見積書に乗せてきました。

第一候補ではなかったので、「わかりました。他も検討するので失礼します」と立ち去ろうとすると、「いくらなら今日乗って帰りますか?」と引っ張られたり、「次の試乗はどのメーカーですか?ここにもその車種がありますよ」などと頼んでもいない中古車の試乗をさせられそうになったりしました。断固として断り続けると、相手はマネージャーを引っ張り出してきて、私はマネージャーに「大きなコミットメントで、長いおつきあいになると思うのでよくよく検討させてください。今買うことはできません。」とはっきり言って、退出してきました。

よくあるディーラーの手をフル活用してきた感じでした。オプションによる価格上乗せ、ローン分割払いによる負担額への錯覚、「いくらなら買いますか?」とこちらに価格を言わせる、などは典型的な手法です。まず KBB や TrueCar で調べた相場を意識して、その調査した価格よりあまりに外れた価格を出してくるようであればそのまま立ち去ることが大事です。焦って価格を言ってしまうのはよくありません。Consumer Reports の次の記事などを読んで、予習しておくことが重要です。

www.consumerreports.org

大変高い買い物で、考えることも無数にありますが、その後山へドライブに出かけたり大活躍です。買って正解でした。みなさまも幸運を祈ります。

アメリカの労働者ビザが停止され、新規の就業が不能に

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本日6月22日に、トランプ大統領非移民労働者のビザを停止する大統領令に署名しました。ここ1,2週間ほどずっと噂されていましたが、ついにという感じです。

www.businessinsider.com

当然のことながら私は移民弁護士ではありませんので、内容の正確性については保証しかねますし、個別の内容については直接弁護士に相談されることをおすすめします。

何が停止されたのか

下記のビザを使ってのアメリカへの入国が6月24日午前0時1分(東海岸夏時間)をもって停止されます。

  • H-1B ビザ: アメリカ企業で働く特殊技能職ビザで、ソフトウェアエンジニアはだいたいこのビザで入国することになります。
  • L-1 ビザ: いわゆる駐在員ビザで、多国籍企業が社員を異動させるのに使います。外資の日本法人からアメリカ法人に異動するパターン、日本企業がアメリカに駐在員を送る両方のパターンが対象です。 L-1A(管理職) と L-1B(専門職) の両方が対象です。
  • J-1 ビザ: 訪問交流者ビザ。大学にいる研究者や企業のインターンで使われる中期滞在用ビザです。今回含まれるのはインターン、研修生、教師、キャンプカウンセラー、au pair(住み込み家事手伝い)、サマー・ワーク&トラベルプログラムです。
  • H-2B ビザ: 短期就労者ビザ。H-1B に含まれないような一時的な需要や季節労働者(例えばスキーリゾートなど)が対象です。

また、上記のビザに紐づく配偶者ビザも対象です。4月から停止されているグリーンカードの新規発行制限は延長されました。

ただし、この大統領令が有効になった瞬間に有効なビザを持っている人、アメリカ国内にいる人、ビザ以外の渡航書類を持っている人(例えば advance parole)は対象外です。ここの読み方が曖昧な点があって、移民弁護士内でも見解が分かれているようです。

それ以外に、グリーンカードの申請カテゴリEB-2, EB-3の見直し、H-1Bの割当方法の見直し、ビザ申請前に生体情報の提出を求める変更、逮捕歴や国外退去歴のある人の労働許可の取り消しなどの変更が記述されています。

有効期限は2020年12月31日までですが、期限の延長が可能です。

エンジニア周りでは誰が困るのか

ほぼ全員です。一部博士号を持っていて世界的な研究成果があるなど特別な要件を満たす人は O-1 ビザを取れますが、それ以外の人はだいたい H-1B ビザまたは L-1 ビザでアメリカに来るでしょう。

特に困るのは今年 H-1B ビザの抽選に通って、この10月から働く人たちです。H-1B ビザは毎年数が決まっていて、4月に抽選し10月から有効になるのですが、この数万人がアメリカ企業での内定が危うい状態になります。この大統領令は特にこの H-1B ビザ新規発給者を狙い撃ちにしていると言われています。

すでにアメリカで働いている人はすぐに国外退去にはなりませんが、年末までにビザが切れる場合にはややこしいことになります(いちおう更新は可能との情報です)。また、仮に現在ビザ更新のために海外に居た場合には再度入国できません。

ビザの更新はできるの?

報道や弁護士見解によると、アメリカ国内でのビザステータスの更新はできるようです。

他にどんな人が入国できなくなる?

この大統領令ではOビザ、Eビザ以外のほぼすべての非移民労働者が対象となり、年間のビザ発給数は52万件にもおよび、半年間も止まると数十万人の人およびその家族に影響が出ます。

エンジニア以外にはどのような例が考えられるでしょうか。いくつか具体例を出してみましょう。

  • トヨタ自動車フォルクスワーゲンなどの外資企業がアメリカ国内で工場を持っているときに、本国から管理職や役員を送り込むことができません。新規に投資したい場合もビザは降りません。
  • 日本の商社から駐在に行っている人が期限を迎えても代わりの人を送ることはできません。
  • アメリカ地方の病院で海外からの医者を迎えることになっていた場合、その医者は来ることはできません。
  • アメリカの学校が外国語教師などをJ-1ビザで呼ぼうとしていた場合、そのビザは降りません。
  • アメリカ国内に家を持っていても、ビザの更新のために一時帰国していた場合、年末までに再入国ができなくなります。

どんな悪影響が考えられる?

アメリカの移民は長らくアメリカの競争力の源泉でした。移民一世または二世によって創業されて、大きくなった会社の例を上げると

などです。Fortune 500の会社の45%を占めるとも言われます。莫大な富と雇用を生み出したこれらの会社が、もし存在しなかったらどうなるでしょう?移民一人あたり1.2人の新しい雇用が生み出されているという声もあります。

アメリカ国内ではおよそ700万人以上が外資企業によって雇用されています。この人たちの管理職や経営者となる人たちが入国できなくなるため、投資計画の見直しや縮小が懸念されます。COVID-19のあとに新規に投資計画があったとしてもビザは降りません。メキシコやカナダへの流出が考えられます。

アメリカの大学に行ってその後就職しようとしていた人も、この不安定な状況を見て考え直すかもしれません。アメリカの大学の学費は多くが留学生によって負担されています

もしかすると報復のために、アメリカ人のビザを制限する国が出てくるかもしれません。870万人のアメリカ人が海外に住んでいて、その中の全員では無いものの多くの人が海外で働いています。この人たちの滞在資格がなくなり、職を失うかもしれません。

多くのアメリカ人は移民はアメリカ人がやらない仕事をしていると考えています。下のグラフでは、薄い色の割合が「移民はアメリカ人がやりたがらない仕事をしている」と考える人の割合です。アメリカ人全体で見ても64%がそう考えています。 

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https://www.pewresearch.org/fact-tank/2020/06/10/a-majority-of-americans-say-immigrants-mostly-fill-jobs-u-s-citizens-do-not-want/ より

トランプは何をしようとしている?

トータルで見て何も得になるとは思えません。こういった労働者ビザは、そもそも発行されるときに「アメリカ人では代わりにならない」ことを求められるので、外国人労働者が居なくなってもアメリカ人の雇用が増えるわけではありません。それどころか減る可能性さえあります。

大統領令には「外国人労働者アメリカ人の雇用にとって脅威」などの強い言葉が並びます。単にCOVID-19に伴う失業者増加を言い訳にして、移民を排斥しようとしているかのようです。11月の選挙をにらんだ有権者へのアピールも考えられます。

これらの外国人排斥につながる動きの後ろには、Stephen Miller (スティーブン・ミラー) がいると言われています。メキシコ国境で親子を引き離したり、国内にいるビザ無し移民を拘束して退去させたりと強行的な政策を立案しているのは、この人物です。

www.businessinsider.jp

www.politico.com

大統領令一つで何十万人の人間が不幸になっているという事実をもっと広く知ってもらいたいです。万が一延長された場合には、さらに影響が大きくなるでしょう。

シアトル キャピトル・ヒル抗議地区(CHOP)に行ってきました

先日、シアトルでのBlack Lives Matterに関連した抗議活動の様子を記事にしましたが、その中で取り上げたキャピトル・ヒル抗議地区(Capitol Hill Organized Protest, 略称CHOP。以前の名前はキャピトル・ヒル自治区 Capitol Hill Autonomous Zone/CHAZ)に出かけてきましたので、その様子をまとめます。

以前の記事はここにリンクを貼っておきます。

seattle-life.hatenablog.com

キャピトル・ヒル抗議地区の様子

今回は地元の友人と一緒に行ってきました。天気が良かったのもあって、そこそこの人手でした。抗議参加者の個人情報には機微な点があるので、人が特定できる形での写真は掲載していません。イメージがわかりやすいように、Google Mapsのリンクも掲載します。

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Broadway と E Pine 通り交差点

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ここは抗議地区から1ブロックほど離れた大通りで、店舗に板が貼られてはいるものの、それを除けば普段とそんなに雰囲気は変わりませんでした。手前には Seattle Central College があり、毎週日曜日にはファーマーズマーケットが開かれていた場所です。線路が見えることからわかるようにここは路面電車が走っていて、普段どおりに運行していました。LGBTQフレンドリーなこの地区の象徴でもある虹色の横断歩道が奥に見えます。

ここから東方面に歩くと抗議地区の入り口になります(出入り口は一つではありませんが、良くニュースに取り上げられる場所です)。

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CHOP抗議地区境界

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見てわかるようにバリケードが設置(もともと設置したのは警察だと思いますが)され、車が進入できないようになっています。この交差点までは普通に車が来ていて、この写真を撮影している交差点で右折していました。特に検問などがあるわけではなく、誰もが自由に出入りできるようになっています。

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Black Lives Matter ストリートペイントの様子

入るとすぐに Black Lives Matter のストリートペイントがあります。描かれてから1週間近く経って、少し色あせてはいるものの、ほぼそのまま残っていました。右側に見えるレストランは抗議地区の中にありますが、営業しています。また、通りには屋台を出して食べ物を提供する屋台の姿もありました。

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通りの屋台

この通りの北側には、付近で最大のカル・アンダーソン公園(Cal Anderson Park)があります。公園に入ると、スローガンが書かれたバナーが飛び込んできました。

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Cal Anderson Park 入り口

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この奥にはたくさんの人が見えますが、みな思い思いに週末を楽しんでいる感じでした。キャッチボールやフリスビーをやっている人、犬の散歩をしている人、座って友人と談笑する人、様々です。このさらに奥には Twitter によく掲載されている農園がありました。なぜ農園かと言うと、農地の保有者には大きな人種間格差があるからです。もちろん白人以外には所有が許されなかったり、財産が奪われたりしたという歴史があります。

時間の経過とともにかなり改良されていて、一部で流通している写真とは全く雰囲気が違いました。隣には温室があったり、場所によってはパイプが張り巡らされていて水が流れるようになっていたりと、工夫が見えました。ただ、この公園を恒久的に農園として使うコンセンサスが住民の間で取れているとは思えず、公園は公園として利用したい人もいますから、この先どうなっていくのかはわかりません。パフォーマンスとしては良いかもしれませんが、本格的な農場というわけではないと思います。

公園を出て南東に歩くと、警察が放棄した East Pricinct (東分署)があります。

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シアトル警察東分署(East Pricinct)

goo.gl

"Police" の文字は "People" と上書きされ、多数の落書きとアートが展示されています。この横には過去にワシントン州で警察官に殺された人の顔写真一覧もありました。写真には掲載していませんが、小学生ぐらいの子どもから大人まで色んな人が前で立ち止まり、様子を見ていました。

さて、いかがでしょうか?私は特に危険を感じることはありませんでした。シアトル市のダーカン市長が「近所のお祭り」のようだと言っていましたが、確かに屋台が出ていたり音楽の演奏があったりする一面はそう見えるかもしれません。真っすぐ歩けば5分ほどで突っ切れますし、シアトル全体が混乱に陥っているのとは程遠い状態です。

ただし、写真にもあるように落書きは多く、車の通行もできない状態で、普段のキャピトル・ヒルとは違う雰囲気になってしまったことは否めません。この膠着状態のまま、20日土曜日未明に悲劇が起こります。

20日未明の銃撃事件

6月20日土曜日の未明に、この抗議地区内で銃撃事件が発生します。このシアトル・タイムズの記事が前後関係も含めよくまとまっているのですが、概要を説明します。

www.seattletimes.com

午前2時頃に地区内で銃声があり、一人が死亡、一人が重症を負います。911で救急通報を行うものの、到着した消防隊は地区から1ブロック離れたところで警察の到着を待機、中には入りませんでした。少し遅れて警察が到着したものの、6,7人で盾と銃をかまえ隊列を組んで入ろうとして集団に阻止されます(この動画の19分ぐらいのところからです)。

この警察との衝突の一方でボランティアの救護隊が犠牲者を自家用車でシアトルにある救急センターまで搬送します。残念ながら搬送の後に死亡が確認されました。その後、別のけが人が目撃されもう一度911通報があります。場所はバリケードの外でしたが救急車は来ないことが明らかになり、こちらもボランティアの手で救急センターに搬送され治療を受けています。

犯人は逃走し、捕まっていません。この事件は様々な意味で波紋を呼びました。

ひとつは、救急要請があったにもかかわらず救急車が来なかったことです。「警察の居ない場所」を作ったつもりが、「医療アクセスの無い、救急隊の来ない場所」にもなってしまったのです。救急隊員の安全確保は必要ですから、銃撃のあった場所に警察の援護なしに入っていけない救急隊の事情も理解できます。すでに「自治区」という看板を下ろした抗議地区ですが、現代のインフラなしに生活することは大変な困難であり、それまで大事になっていなかった課題が明らかになりました。

もうひとつは、銃撃が発生し犠牲者が出たことです。確かにアメリカでは頻繁に銃撃が発生しますが、それでもキャピトル・ヒルは活気のある人気地区で、特に治安が悪くて避けるような場所ではありません。実際に私もキャピトル・ヒルのアパートに住むことを検討したことがあります。

抗議活動が長引くにつれて様々な人が出入りするようになり、以前と雰囲気が変わってきたと訴える地元商店の声が記事には取り上げられています。抗議活動の趣旨には賛成するものの、安全が脅かされるような事態は避けたいのは当然です。また友人からの又聞きですが、この地域に住む住人の中にも、昼夜問わずたくさんの人がいることによる騒音、落書きやゴミの増加、全体的な雰囲気の悪化に不満を持つ声があるようです。

確かに警察が撤退し、昼夜催涙ガスが飛び交うような暴力的な状況では無くなりました。それが長期持続可能な、新しい社会の形にはなかなか繋がっていない状態です。

政治的リーダーシップ不在の状況

以前も書きましたが、この抗議地区は単一の組織が仕切って発生したものではなく、自然発生的に出来たもののようです。そのため組織として統率があまり取れていなかったり、中心となる人物が変わったりしてコミュニケーションが難しいという声が上の新聞記事に紹介されています。

シアトルの話題ではこの抗議地区の様子ばかりが取り上げられますが、もっと大きな平和的行進は同じようなメディアの注目を集めません。6月13日のサイレントマーチには主催者発表で6万人の人が参加しました。これはメディアも反省しなければならないと個人的に思いますが、やはりセンセーショナルな話が先行してしまうのです。

www.seattletimes.com

Black Lives Matter の運動、警察の改革に関してはこのように賛同する人が多くいる状況ですが、なかなか政治的な動きになってきません。実際にBlack Lives Matterシアトル・キング郡の要求内容には警察や司法制度の改革も含まれています。

シアトル市長やワシントン州知事、それに議会は、抗議活動と警察組織両方に良い顔をするのではなく、実際に行動を伴ったリーダーシップが求められているのではないでしょうか。そして、全米レベルではもちろん連邦議会ホワイトハウスのリーダーシップがあるべきです。抗議活動はシアトルだけの話ではありません。

"Defund the police"と単に言うと、警察が無くなるような状態を想像するかもしれませんが、実際にはそうではありません。実現可能性のあるたくさんの案が提案され、議論されています。もう少し詳しい内容や、現状の問題点の参考になるYouTubeビデオを紹介します。

ひとつはコメディアン John Oliver による警察特集です。HBOの政治風刺番組で、深夜に放送され、時々放送禁止用語や下品なジョークも混ざります(職場では見ないほうが良いかもしれません)が、問題点がよくまとまっていて入門として良いと思います。

youtu.be

もうひとつは法律系YouTuber、 LegalEagle による制度改革の提案紹介です。こちらは淡々と様々な提案内容を説明していく動画ですが、単に警察をなくす、資金を引き上げるという話だけではないことが理解できると思います。

youtu.be

終わりに

キャピトル・ヒル抗議地区の様々な面を取り上げるこの記事を書いたのは、日本語でのニュースがあまりにも実態を反映しておらず、Twitterにもミスリーディングな情報ばかりが掲載される現状が許せなかったからです。この記事には良い面だけではなく、土曜日の銃撃も含め課題も書いたつもりです。シアトル市民として個人の意見を言うならば、「趣旨には賛成するものの、この形態は持続可能ではない。政治の変化も含め恒久的な変化にしていく必要がある」と思います。

市民は声を上げました。政治が行動を起こす時でしょう。

シアトルでの人種差別抗議活動と自治区の様子

前回のコロナウイルスとシアトルの記事を書いてすぐ、ジョージ・フロイドさんが警察官に殺され、それを発端とする抗議活動が全米に広がりました。ここシアトルも例外ではなく、たいへん大きな抗議活動が起こり、それに便乗した暴動も発生してしまいました。

警察力と人種差別

ここまで大きな話になったのには、黒人に対する構造的人種差別と、アメリカの警察官の暴力性が混ざりあって大きなうねりになったという理由があります。アメリカでは、毎年1,100人程度が警察官に殺されているという推計があります。日本では公務執行中の警察官が市民を殺害するというのはほぼ起こっていないようですから、ここに大きな隔たりがあります。もちろん殺されているのは黒人だけではありませんが、人口の13%を占める中、殺害される割合としては31%を占め、さらに特に攻撃もしていないのに殺される人の中では39%を占めています。他の人種の数倍の確率です。

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https://www.vox.com/identities/2016/8/13/17938186/police-shootings-killings-racism-racial-disparities より引用

さらに、ニューヨークの"Stop and frisk"(ランダムな職務質問と路上身体検査)に代表されるように、特に根拠もなく突然警察官に突然引き止められ、手荒に検査をされたり、時には逮捕されるということがあります。年間60万件前後の路上身体検査が行われた2010年前後には、対象となった人の実に87%が黒人とラティーノ(ラティーナ)で占められました。一方白人は10%程度です。その一方で人口比では(ヒスパニックを除く)白人が33%、黒人とラティーノが53%です。特に若い黒人男性やラティーノが対象となりやすいという統計があります。つまり、人種差別的な先入観に基づく政策が公然と行われているのです。

今回の抗議活動と警察との衝突

今回の抗議活動でも警察とデモ隊との衝突が大変多く発生しました。次のVOXの記事が多くをまとめています。中には見るのが辛いものもあります。アメリカでは抗議活動を行うことは憲法修正第一条に認められた市民の権利だという認識があり、平和的な活動を暴力で押さえつけようとしているとして大変問題になりました。

www.vox.com

シアトルでの抗議活動

最近、シアトルで Capitol Hill Autonomous Zone (キャピトル・ヒル自治区)というものができたというニュースを見たことがあるかもしれません。

この Capitol Hill というエリアは、おしゃれな飲食店が立ち並ぶシアトルでも人気のエリアで、特に若者に人気です。週末にはファーマーズマーケットも開催され、私もよくでかけていました。

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Capitol Hill ファーマーズマーケットの様子

シアトルでの抗議活動(デモ)は、一部を除き平和的に行われていました。ところが、警察がデモ隊に向けて催涙ガスやペッパースプレー、閃光弾を発射するということが相次ぎました。Capitol Hill でもデモが盛んに行われ、警察との衝突も多かった場所です。6月1日には取材中のメディアが警察に閃光弾を撃たれるという事件も発生しています。

6月5日にはシアトル市長が催涙ガスの使用を禁止する命令を出します。ところが、この命令を無視した形で、数日後に再び催涙ガスが使用されてしまいます。

 

これに対抗してさらに抗議は続きます。ちょうどCapitol Hillには東分署(East Precinct)があり、そこでの抗議も激化しました。政治家もデモに参加し、警察への批判は続きます。そして数日後... 正確な理由は不明のまま、警察は東分署からの撤退を行いました。

こうして、Capitol Hill は警察の暴力に対する一つの答えとして、象徴的な場所となりました。

www.seattletimes.com

キャピトル・ヒル自治区とその反応

この「自治区」はどうやら単一の組織が作り上げたものではなく、自然発生的に地域の人間が作り出したもののようです。飲食店や商店は無料の水や軽食を用意したり、人々が自主的に日用品を寄贈して譲り合うなどの光景が見られています。中心となる交差点では人々が思い思いにスピーチを行って、人が集まっています。

 また夜には映画鑑賞会が開かれたり、まるでお祭りのようです。実際、そういう感じなんだと思います。

最近では Black Lives Matter のストリートペイントも完成しました。

私はまだここに足を踏み入れていません。ですが、近くに住んでいる同僚の話を聞くと、平和的でシアトルらしさのある抗議活動になっているとのことです。参加している人たちの中にもこの状態が長く続くとは思っていないし、これが最終的な解決にはなっていないことは承知している人もいるようです。その一方で悪のりする人が出てきたり、これに便乗した騒ぎも発生はしているようです。

この状態を好ましく思わない人たちがいます。そうですね、トランプ大統領とその支持者です。

ワシントン州知事とシアトル市長に対して Twitter 上で罵り、対する知事と市長も応戦します。

www.npr.org

軍隊を派遣して鎮圧することもちらつかせますが、州知事が拒否します。アメリカでは、州知事の同意なしに大統領が軍隊を派遣することはできないようになっています。そして、様々なメディアで「商店がみかじめ料を請求されている」「警察が立ち入れない」などのでまかせが流れています。Fox News は加工した写真やミネアポリスの写真を使ってミスリーディングな記事を掲載し、世論を誘導しようとしています。

このあとどうなっていくのかはわかりません。現状は警察との暴力的な衝突よりは良いとは思いますが、持続可能だとは思いませんし、自治区の要求事項も実現可能ではないと批判されています。本来であれば大統領を始めとしたリーダーが落とし所を見つけていくのですが、その素振りも見せません。出口の見えないことが一番困りますね。

シアトルのそれ以外の地区

今日は大規模なサイレントマーチ(静かな抗議活動)が行われて、デモに参加するために早めに閉店した商店もありました。

この動画でわかるように、声を立てずただ静かに抗議をしています。

こういったことはあるものの、それ以外の日常生活には変わりはありません。今日はスーパーに買い物に行ってきましたが、COVID-19のために人通りが少ない以外は普段どおりです。Capitol Hill までは車で10分ほどの距離のところに住んでいますが、別世界です。

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Lake Union 近くの公園

シアトル市民が全員抗議活動に参加しているわけではないですし、全員がその手法に賛同しているわけでもありません。また、抗議活動も単一の組織が仕切っているわけではなく、それぞれ個別に連携を取りながら行われています。ですが、多くのシアトル市民は人種差別がなく、誰もが警察の暴力を受けずに過ごせる日が来ることを願っているのではないでしょうか。

COVID-19新型コロナウイルス影響下のシアトル(2020年1月から5月まで)

COVID-19がアメリカに広まって数ヶ月となります。ワシントン州は、全米で一番早くに公式な感染ケースが報告された場所であるため、早くから緊張感がありました。本格的に生活が変わってから3ヶ月ほどですが、あまり記憶が古くならないうちに記録もたどりながら、時系列にまとめてみました。

2020年1月21日: 全米初の新型コロナウイルス例がワシントン州で報告される。

First Travel-related Case of 2019 Novel Coronavirus Detected in United States | CDC Online Newsroom | CDC

このときは日本でもまだダイヤモンド・プリンセス号すら到着していなかった時期で、広まり方もよくわかっていませんでした。ちょうどこの症例の人が1月15日にシアトルタコマ空港を利用した全く同じ日に、私も同じ空港を利用していたので、すごく近くに来たなと言う感じはありました。

ただ、その直後に起こったシアトル中心部での銃撃事件のほうが衝撃で、ニュースも周りの会話もそれ一色でした。

www.seattletimes.com

 

2020年2月 ヨーロッパの感染例がじわじわ増えてくる

シアトルはその後しばらく感染者が大きく増加することはなく、2月は日本(ダイヤモンド・プリンセス号)とイタリアの感染者数の増加が話題の中心でした。出社や出張も通常通り行われていました。

パラサイトのアカデミー賞作品賞受賞などが話題になり、2月16日に映画館に見に行った記録があります。

ただ、出張の制限は2月中旬から増えてきました。APACに行くのはなるべく控えるようにというお達しがありました。私は2月下旬に東京でイベントに参加する予定だったのですが、イベント自体がキャンセルになったので、出張も取りやめになりました。

日本やイタリアでの買い占め騒ぎを見ていたので、2月24日に保存食を中心に2週間分程度の買い出しを行い、万一自主隔離になったときに大丈夫なように備えました。また、日用品もAmazonで多めに手配しました。

ちょうど株価が急落し始めたのがこの頃ですが、株価以外では街はまだ通常運行でした。

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2月27日にダウが4.42%の急落

ところが、2月29日にInsleeワシントン州知事、3月3日にDurkanシアトル市長がそれぞれ緊急事態宣言を行い、街の雰囲気が急変します。

2020年3月 ニューヨークでの症例が急増する

3月3日に勤務先すぐ近くのSouth Lake UnionにあるAmazonキャンパスで、Amazon社員の最初の感染ケースが報告されたということで、一気に緊張感が増します。

www.geekwire.com

またしばらくすると、ニューヨークでのCOVID-19症例が急増しました。アメリカ国内出張の取りやめや、在宅勤務の奨励が行われたのがこの時期です。月の上旬はまだ外出規制などはなく、「自粛で乗り越えましょう」という雰囲気でした。

3月中旬になるとシアトルでも買い占めが発生します。缶詰や冷凍食品がスーパーから姿を消しました。また、Amazonでも配達の遅延や日用品の品切れが多発しました。

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空になった3月中旬のトレーダージョーズの棚

3月12日には公立学校の休校、3月15日にはレストランの休業命令など矢継ぎ早に対策が出されます。また、観光地から人が姿を消します。これは3月22日に Pike Place Market で撮影した写真です。普段は人が多くて思い通りに歩けないほどですが、この日は人の姿もまばらでした。

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3月22日のPike Place Marketの様子

この写真を撮影した翌3月23日、州知事から外出禁止令が発表されます。

www.seattletimes.com

 

もちろん食料品の買い物などは通常通りできるのですが、いろいろ品薄になっている上に social distancing ポリシーで店内の人数制限をした上に、人同士で約2m間隔を開ける必要があり、店の前には行列ができていました。

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スーパーの前にできる行列

2020年4月 新しい日常がやってきた

外出禁止令が出てしばらくすると、スーパーの品薄も解消し、在宅勤務にも少しずつ慣れてきます。ですが、それと同時に「これは長期化する」ということが段々と明らかになってきます。4月はワシントン州全体で感染者数が1万人を超え、毎日数百人の新規感染者が報告され、衰えがなかなか見えないという厳しい状況でした。4月2日には、当初2週間だった外出禁止令は5月2日まで延長され、4月6日には公立学校の年度内(7月まで)の休校が決まる、という状況でした。

最初はデリバリーと持ち帰り営業をしていたレストランも休業になったりと、どんどん状況が悪くなっていくのがわかりました。シアトル全体としてこれを乗り越えていこう、という「#WeGotThisSeattle」というキャンペーンが行われたりしました。街のシンボルであるスペースニードルに、スローガンを書いた旗が掲げられました。

 

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https://www.seattletimes.com/seattle-news/seattle-times-photos-of-the-day/ からの引用

そして4月中旬、CDCがそれまでの方針を転換し、マスクの推奨をするという大きな変化がやってきます。アメリカでは通常一般人はマスクをしない文化であり、この変化は衝撃でした。5月になると店内マスク義務化のお店が増えてきます。

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ドラッグストア入り口に貼られるマスク着用推奨のお知らせ

2020年5月 外出禁止令解除の道筋が発表される

5月上旬、州知事から外出禁止令解除に向けたロードマップが発表されます(詳しい情報はワシントン州のサイトで確認できます)

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ワシントン州の再開プラン

これは感染者数の変化に応じて、地域別段階別に経済活動を再開していくというものでした。そして、感染者数が再び増加に転じたり、減少しなかったりした場合には再開を遅らせる、または再度閉鎖をするという条件がついています。

5月22日時点での Seattle Times の記事によると、下記のような日程になっているようです。

6月1日にフェーズ2に移行。5人までの世帯以外の人との集まりや、美容室、不動産業、普段の50%での定員かつ一席あたり最大5人という条件でのレストランの開業などが許可される予定です。

6月22日にフェーズ3に移行。野外での50人以下のスポーツ、バー(定員の25%)、映画館(定員の50%)、図書館、博物館などの営業が再開される予定です。

7月13日にフェーズ4に移行。50人以上の集会、ナイトクラブ、コンサート、スポーツイベントなどが解禁される予定です。ただし他人との間隔は2m程度保つことが推奨されます。

どのフェーズでも在宅勤務は推奨され、フェーズ4になっても完全に昨年までの日常は戻ってこない様子です。

 

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品揃えの戻るスーパー店内

終わりに

勤務先からは年内は原則在宅勤務になるという見通しが伝えられたので、家で快適に仕事ができるような環境づくりを行いました(これについては別途また記事を書こうと思います)。また、ビザの発給が取りやめられ、グリーンカードの処理に遅れが生じたり、一部発給が中止になったりと、出稼ぎ労働者にとっては不安になるようなニュースが続きます。

以前のように海外旅行ができるようになるのは来年移行になるのは間違いなく、日本に行くこともできないなどの残念な点もあります。それでもアメリカの失業者が2割を突破しようとしている中、少なくとも仕事があり、当面のアメリカ滞在はできるということで、これからもがんばっていきたいと思っています。