シアトルぐらしのソフトウェアエンジニア

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アメリカ就労ビザ L-1 の手続き(準備編)

当然ながら私は法律の専門家ではなく、ここに書いてあることは単なる体験記であり、法的なアドバイスを構成するものではありません。個々の事例や確実な情報は一次情報源および移民弁護士などの専門家を参照願います。

ビザの種類

アメリカ国籍や永住権を持たない日本人がアメリカで働くには、就労ビザが必要です。就労ビザには主に次のような種類があります。

  • L-1: 企業内異動用ビザ。役員、管理職、専門知識労働者が対象で、日本法人で1年以上働いている必要がある。抽選が無く、基準を満たしていれば発給される。配偶者も働ける。
  • H-1: 専門職ビザ。役職に応じた学位または代わりになる就業経験が必要。年間の発給数に上限があり、倍率3倍程度の抽選になる。配偶者は原則働けない*1
  • O-1: 卓越能力者。博士号を持っていて研究の実績がある、専門分野で有名な賞を受賞している、業界に多大な貢献をしているなどの場合に取得できる。抽選はないが、書類の準備が大変。配偶者は働けない。

就労ビザについてより詳しくは、USCISのWebサイトが参考になります。

www.uscis.gov

これよりは内容は簡単になりますが、国務省が用意している日本語のページもあります。

すでに日本法人で1年以上働いていて条件を満たせる場合には、L-1ビザが最も簡単だと思います。新しく採用される場合には H-1 または O-1 などになるでしょう。これは会社が契約している移民弁護士が、最も可能性の高いビザを選んでくれるはずです。

私はL-1ビザ、正確に言うとブランケットL-1を選択しました。ブランケットL-1ビザというのは、大企業が社員を移動させる際にあらかじめUSCIS(米国移民局)からまとめて許可をとっておく方式です。基準は変わりませんが手続きが圧倒的に短くなります。

L-1ビザにはさらに細かく、L-1Aという役員・管理職枠と、L-1Bという専門知識労働者枠があります。L-1Aのほうが更新できる年数が長く7年(L-1Bは5年)で、永住権を取りやすいという特徴があります。L-1AとBのどちらが向いているかも移民弁護士が条件を確認してくれると思います。私はL-1Aの要件に該当したので、管理職としてビザの手続を進めることになりました。

全体の流れ

ブランケットL-1ビザの場合は、予め会社に包括的(ブランケット)なビザの許可が降りていますので、移民弁護士が必要書類を作成し、それを大使館に持っていって面接し、ビザの発給を受けます。

また、書類の中にはアメリカで雇用主となる会社(私の場合は米国法人です)のサインが必要なものがあり、移民弁護士が書類を作成したあと米国内で書類の郵送が行われ、サインされます。物理的な移動が発生するのでどうしても遅くなります。

最も時間がかかるのは移民弁護士に送る必要書類の準備と、移民弁護士による書類の作成です。面接からあとのプロセスは、書類不備がなく大使館の面接が早く取れれば、そこから2週間程度で完了するようです。

時系列

  • 2018/10/11(木): 移民弁護士事務所から手続きの案内が来る
  • 2018/10/26(金): 必要書類一式を弁護士事務所にPDFで送付
  • 2018/11/29(木): 書類の下書きを確認し、いくつか訂正してもらう。その後会社の担当者のサインなど必要な手続きが進む。
  • この間、弁護士事務所から私の雇用主のUSオフィスに書類が送られ、確認とサインが行われる。
  • 2018/12/05(水): UPSで書類が発送される
  • 2018/12/10(月): 書類が届く。本来は金曜日に届くはずが航空便の遅延で週明けに。
  • 2018/12/13(木): アメリカ大使館(赤坂)で面接。
  • 2018/12/17(月): CEAC での申請状況が "Issued" になる。
  • 2018/12/18(火): パスポートが発送される。

移民弁護士への必要書類

まず移民弁護士にI-129Sというフォームを準備してもらいます。さらに、業務内容と、なぜか管理職として認められるかを記述した推薦状も書いてもらう必要があります。そのために移民弁護士には下記の書類をpdfにして送りました。

  • 卒業証明書、成績証明書(英文)
  • A4で4ページ程度に詳しく業務内容を書いた英文履歴書
  • ジョブディスクリプション(採用する際の職務記述書)
  • パスポートの写真ページのコピー
  • 過去1年間の給与明細
  • 組織図(正式なものは無いので、レポートラインの説明)
  • 結婚証明書(配偶者ビザ用)

他にメールで仕事内容に関していくつか質問に答えました。1ヶ月ほどで必要書類の下書きが出来上がり、PDFで内容を確認していくつか訂正してもらったあと、UPS(宅配便)で書類一式が届きました。

なお内容に一部間違いを発見したので、差し替えたPDFを一部分送ってもらって、自分で恵比寿のキンコーズに行ってレターサイズで印刷し、一部のページだけ差し替えました。サインのないページで助かりました。日本の穴あけパンチと幅が違ったので、片方ずつ位置を合わせて穴を開ける、のような工作っぽいことをするはめになりました。

最終的な推薦書類一式はこんな厚みです。分量が多く見えますが、同じ内容が3回繰り返されていますので、実際の量はこの三分の一です。

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推薦書類一式

 大使館に面接の予約を取る

書類を待っている間に大使館での面接の準備を行います。DS-160というフォームを埋める必要がありますが、このシステムがWebシステムの中でもかなり使いづらいです。ランダムにタイムアウトして入力内容が消えます。保存はできるのですが、ページの内容を全部埋めないと保存できません。コツとしてはまず質問には"No"と答えてSaveできるようにして、必要なところを"Yes"にして追記しながら保存することです。

入力時間は2時間弱かかりました。配偶者のものは質問内容が少ないので1時間以内で終わりました。

最後に写真の登録が必要です。私はビザの写真はいつもスタジオ728 銀座店でお願いしています。各国向けの寸法をきちんと把握していて、きれいに撮影してデジタルデータもくれるのでおすすめです。CDでもらえるJPEGデータを登録すればOKです。

入力したDS-160の内容を用いて面接の予約を行います。米国ビザ申請 | 面接の予約をする - 日本 (日本語) の説明書きに従います。料金はクレジットカードで支払うのが最も簡単でしょう。支払ったら予約が可能です。予約の変更は2回まで無料でできます。

ビザの返送先を別途記入しますが、こちらは日本語で記入します。それ以外の項目はすべて英語です。

記入内容など詳しい内容は大使館のゆるキャラ、豆夢が教えてくれるビデオがあります。ゆるいですが内容は確かで、わかりやすいです。

 

www.youtube.com

 

いずれにせよ、大使館のビザ申請のページはよく読みましょう。必要な情報はすべて書かれていますし、最新情報が手に入ります。

 

jp.usembassy.gov

 

 面接編に続きます。

seattle-life.hatenablog.com

*1:H-1Bで渡航する主たるビザの保持者が、グリーンカード取得のためのI-140の請願が許可されているか、6年を超えてH-1Bで働く許可を持っている必要がある。ただしトランプ政権はこの例外を無くし、全員働けないようにしようとしているので、今後の情報に注意が必要。

シアトルへの異動が決まりました

今年の5月にアメリカに異動することを決心して8ヶ月、ようやく手続き上の準備が整い引っ越すことになりました。日本国外に住んだことが無いので、インターネットで検索して見つかる先人の体験記やアドバイスには大変お世話になったので、私も役に立てることがあればいいなと思ってこのブログをはじめました。

私はどんな人か

アメリカのカリフォルニア州に本社があるテック企業の東京オフィスで、2015年から技術職で働いています。生まれてからずっと日本に住んでいて、海外旅行は好きでよく行くものの海外に住んだことはありません。

2018年現在で34歳、キャリア9年目です。日本の大学院でコンピュータサイエンス修士を持っています。

話せる言語は日本語と英語で、中国語を勉強中です。日本語は大阪弁ネイティブです。英語はTOEIC 990点と英検1級を持っていて、ネイティブとは明らかに違うものの、日常生活ではほぼ支障はありません。仕事では、主に技術ライティングやプレゼンテーションについて、もっと高いレベルを目指したいと思っています。中国語はHSK 1 や 2 の教科書をやっているレベルです。

異動を決めてから決まるまでの手続き

2018年5月: 上司になるべく早く異動したい旨を伝える。Director (上司の上司)が1ヶ月休暇をとっていたので、返事が遅くなる。

2018年6月: 上司から「いつでも異動してOKなので、時期が決まったら教えてほしい」と言われる。

2018年7〜8月: いろんな人に相談したり、調査をしたり。移動先候補はサンフランシスコ、シアトル、ニューヨークだったので、ここでも悩む。

2018年9月下旬: 住民税のことを考えると年内に異動するのが良さそうなので、年内に異動したいことを上司に伝える。正式に移動手続きを始める。場所はシアトルに決定。

2018年10月上旬: 社内の手続きが正式に終了し、異動の承認が下りる。ビザの手続を開始

2018年12月: ビザが下りる。引っ越し。

2019年1月: シアトルオフィスで勤務開始予定。

なぜシアトルか

もともとサンフランシスコ、シリコンバレーで働きたいと思っており、本社が近いこともあって第一候補でした。しかし、上司がシアトルオフィスで上司の近くにいることはメリットが大きいこと、一緒に仕事している開発チームの多くがシアトルにいること、サンフランシスコオフィスよりシアトルオフィスのほうが個人的に好きなこと、家賃が安いこと(同じような設備、広さで月に10万円以上安いです)、税金が安いことなどの理由でシアトルに決めました。

ニューヨークも一度は住んでみたかったのと、仲の良い友人がいるので魅力的だったのですが、とても家賃や生活費が高いこと、日本から地理的にも時差的にも遠くなってしまうこと、本社と違うタイムゾーンになってしまうことなどで諦めました。

ブログに書こうと思っていること

  • シアトルの魅力
  • ビザや引っ越しの手続き
  • シアトル、ワシントン州の生活、手続き
  • アメリカで働いて変わったこと

他にもこんなことが知りたい、気になる、というのがあればコメントください。